主人公が薬草園にシュオンを探しに行く前の夕方辺り。
シュオン視点のお話。


◇ 運命という光 ◇

雲。
まるで綿飴のような。

こんな空を見ていると、どうしてもあの頃に思いを馳せてしまう。

あの街に着いた日のこと。
馬車から降りた途端、体中を赤く照らした夕陽のこと。
小さな窓から切り取った景色とは違う、本物の自然に圧倒されたこと。

……感動よりも、不安を覚えたこと。

僕を見る人々の表情はどれも柔らかく優しげだった。
新しい住人を歓迎する笑顔に、少しの好奇心を滲ませて。
……素朴で優しそうな人々。

その笑顔が凍りつく瞬間を、僕は知っている。

自己嫌悪と、裏切られたかのような眼差しを僕に向け、
残っていた哀れみが恐怖に塗り替えられていくその様。

それを思うと、足がすくんだ。

同じ思いを味わうとは限らない。
そう分かってはいても、繰り返された過去が、僕を臆病にさせた。
結界が育ち、意識が混濁することが無くなっても、その不安は消えなかった。
誰とも関わらずに、自分を守ることで精一杯だった……。

けれど、あの嵐の夜を境に、僕の世界は一変した。

彼女が全てを変えてくれた。

理屈じゃなく純粋な気持ちが、痛い程、大切なのは『今』だということを教えてくれた。

――あれから、12年もの年月が流れるように過ぎた。

いつも僕の隣でちょこんと座っていた小さな女の子は、
いつの間にかあの頃の僕よりも大人になっていて。

思いがけない強さで僕を導いてくれる優しさや、好奇心に輝く表情豊かな瞳。
そして、一生懸命に頑張る姿はあの頃から変わらずに。

時折そこに、僕の知らない表情が生まれる。
瞬間ごとに、大人びていく少女。

いつからだろう?
彼女を愛しいと想う気持ちに、甘い切迫感を伴うようになったのは。

想いを告げたいと願うようになったのは、いつからだろう……?

……それでも。

僕の気持ちよりも何よりも、ただ、彼女の笑顔を見ていたい。
彼女が幸せなら、告げずに想い続けるだけで構わない。

――けれどいつか、全てが解決する日が来たら。

――僕という存在が彼女を悲しませることのない日が来たら。

迷わずに、この想いを――


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